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1.外観

このアンプは6BM8PPを改造した物なので、外観は基本的に変わっていません。が、 奥に少しだけ見えている電源トランスカバーが、紅茶の空き缶からタカチのMB-5にグレードアップ(?)しています。

この頃、完成した350B-CSPPアンプの音に大満足していた私は、 6BM8-PPアンプの音に不満を覚え何とかしたいと考えていました。

そんなある日、上條さんの 超3極管接続Ver.3 EL86 SEPP ステレオパワーアンプ 2SJ18 CSPP OTLパワーアンプの製作の記事を交互に読んでいた私は、 帰還管が出力管と同一の電圧振幅をしながら出力管に必要なグリッド信号を与える超三極管接続は、 並列給電型SEPPのドライブ回路としては最適ではと思いつきました。

そこで早速LTspiceで確認して観たのが次の回路です。

2.回路

OPTの改造 OPTは東栄無線のOPT-10P(5kΩ)を改造して、B端子を2つに分けました。

B電圧の変更 製作してみると思った以上に電流が流れるので、PTのタップの位置を変更してB電圧を220Vに変更しました。

初段の負荷を変更 R1・R2は最初、6BM8PPと同様に5.6kΩで製作したのですが高域特性が悪く(OPTとの相性もあると思います)、 20kHzで-3~4dbという状況だったので3.3kΩに変更しました。

初段FETの変更 初段の負荷を小さくしてゲインが足りなくなったので、350B-CSPPで残った2SK185ニ変更しました。

高耐圧Trによるカスケード 出力段の嵩上げ電圧が大きいため、初段を高耐圧Trによるカスケードとしました。 (カスケードのバイアスV1(13V)は本来12~15Vのツェナーですが、シミュレーションの効率化の為にVoltegeで代用です。)

高域の歪率補正(C3) 歪率のシミュレーションで説明するが、C3は高域での歪率補正用です。

SG電圧を合わせる U1bのSGに入れたツェナーはOPT-10P(5kΩ)の一次側の直流抵抗による電圧降下分。
降下電圧=一次側の直流抵抗(232Ω)×プレート電流(30mA)≒約7V
(このシュミレーションでは8.2Vのツェナーを使っています。)
交流分は打ち消されるので考慮しなくても良いと思います。

ヒーター・バイアス 嵩上げ電圧が220Vもあり特にU2側はカソードが大きく振られるため、ヒーターはVC(220V)に接続する必要が有ります。 実は電源トランスケースがタカチのMB-5にグレードアップした理由もここにあります。6BM8PPの時にはマイナス電源(VZ)はヒーター電源を利用していたのですが、 ヒーター・バイアスをVCにするためマイナス電源(VZ)用に別のトランスを追加するスペースが必要になったので、 トランスカバーをMB-5に変更しVBの電源回路にお引越しいただいた次第です。

DCバランスサーボ(Vadj) このアンプもVadjの部分には、6BM8PPと同じDCバランスサーボが入ります。

シミュレーションによる性能
none NFwith NFNF量最大出力
利得36.30倍14.49倍7.97db12.46W
D.F4.6613.29

3.DCバランスサーボ(Vadj)

 超三極管接続はインピーダンスが極端に低くなるため、DCバランスサーボが不可欠だそうです。

 このDCバランスサーボ回路は、上條さんの EL34超三極管接続Ver.1プッシュプルパワーアンプの製作を参考にさせて頂きました。

 参考までに VR1-a・VR1-b及びVR3-a・VR3-bはそれぞれ1個のVR(100Ω)です。このように抵抗値を入力すると、.paramパラメータによりS及びTの値を設定すると2個の抵抗を1個のVRのように扱えます。(.paramパラメータはEditメニューのSPICE directiveを使って直接入力します。)

4.歪率のシミュレーション

 上の2つは10kHzのFFT解析で高域の歪率補正(C3)無し(左)と有り(右)。

 左は比較のための1kHzのFFT解析。3つを比較すると、高域の歪率補正(C3)が無い場合1kHzと比較すると約4db2次歪が増加している。

 実際はC3による補正を行う前に、CSPPに変更してしまったので実機での確認は取れていません。

 補正を行わなかったというよりも当時は理由が良く解らず、当然ながら補正する方法も解らなかったからです。

補正方法の発見は、上條さんの EL509 ステレオパワーアンプの高域歪みの補正をシミュレータで試してみただけです。試してみると、このように1kHzとほぼ同じレベルまで改善されるようです。 しかし、理由は良く解りませんでした。上條さんの場合は、「ストレー容量の影響による上下管のゲイン差を一致させるため」ということです。 が、この場合シミュレーションですからストレー容量は存在しません。

シミュレーションによる歪率
none NFwith NF
1k0.051%0.019%
10k(C3なし)0.099%0.043%
10k(C3あり)0.060%0.027%

5.高域補正のシミュレーション

 C3を入れるとU1bのゲインを低下させる効果があり、挿入すれば高域の歪が改善されそうなことは解りましたが理由が解らないのも気持ちが悪いので、少し考えてみる事にしました。
図は上段左=補正無し、上段右=補正有り、下段左=DEPPの場合(以上全て赤=U1bのIp・青=U1bのIpです。)、下段右=私の作成したOPT-10P(5kΩ)のSpiceモデルのインピーダンス特性です。 (OPT-10P(5kΩ)のSpiceモデルはこのシュミレーションの為に、私が作成した物で実際の製品との整合性は確認しておりません。)

 以下は私の拙い考察ですが、まず下段に注目するとOPTのインピーダンスの上昇に伴い出力管のゲインが減少している。 DEPPの場合どちらもプレート出力なので、ゲインは下がるがバランスは取れている。ではSEPPの場合はどうなのだろう? SEPPの場合U1側は超三極管接続の動作だが、U2側はカソードフォロワーとして動作している。 つまり、OPTのインピーダンスが上昇した場合U1側はゲインが下降しないように帰還が働くがU2側は働かないのでアンバランスが生じる。 アンバランスが生じるとCSPP結線でU1のプレートとU2のカソードが結合されているためにアンバランスが助長されるのではないか? そこでC3を挿入し、OPTのインピーダンス上昇に応じてU1の高域ゲインを減少させてやればバランスが取れるのだと思います。 (本当はまだ納得のいかない部分があるのですが、今の私の知識ではここまでです。また何か思いついたらシミュレーションで確認して、ご報告いたします。)

6.最大出力のシミュレーション

 クリップポイントをシミュレートしてみました。緑=OUTの電圧、赤=出力段(U1-b)のIp、青=出力段(U2-b)のIp。 左は嵩上げ電圧(VC)=220V、右は嵩上げ電圧(VC)=250Vです。
左(VC=220V)は、U2側の初段が先にクリップしてしまうため出力の下側が先に潰れています。確認のため嵩上げ電圧(VC)を250Vにしてシミュレートしたのが右です。 (こんな事が簡単に試せるのがシミュレータの魅力でしょうか?実機はVCはVBを倍圧整流で得ているので、こんな事は出来ません。)
Ipの波形が変な形をしているのは、グリッドがプラス領域になってグリッド電流が流れているせいです。 ノンクリップでの最大出力を計算すると、12.12V=12.4W。

OPTが5kΩなのとSEPPを超三極管接続で強力にドライブしているお陰で、実機でも約10Wの出力でした。

7.歪率の実測

当時に測定した歪率の実測データです。
上段は1kHz・下段が10kHzですが高域補正(C3)は入っていません。
赤はNFなし・紫がNFありです。
測定は efuさんのWaveSpectraを使用しましたが、サンプリング周波数が44kHzなので10kHzは2次歪だけしか表示されていません。
一応歪率を計算してみると

none NFwith NF
1k0.100%0.035%
10k(C3なし)0.501%0.282%
サンプリング周波数が44kHzなので、精度に問題はあるにせよ10kHzは悲しい値です。
この方式は是非もう一度挑戦して、高域の歪補正(C3)を確認してみたいと思っています。

8.周波数特性の実測

周波数特性の実測データです。(赤=NFなし・紫=NFあり)
私の測定の仕方に問題が有り精度は問題ありですが、傾向は解ります。 このデータは初段のカソード抵抗(R1・R2)が5.6kΩの時のデータです。 3.3kΩに変更して、無帰還時-2db(20kHz)程度まで改善しました。

9.フローティング電源方式との比較

フローティング電源を利用した回路
 並列給電型SEPPは「超三PPを最小限の改造でCSPPに出来ないか?」というのが発想の原点で、LTSpiceでシミュレートしてみたら上手くいったというのが実状なので実は深く検討していませんでした。
 しかし、実際に作ってみると私にとっては中々魅力のある音で何より超三PPで気になっていた低音のゴリゴリ感が有りません。CSPPに共通した雰囲気があるような気がします。
 そこで次回の挑戦の為にフローティング電源を採用した回路(左:クリックで拡大可能)と比較してみました。出力はプレート側から取り出していますがカソードがわでも全く同じです。
 本来このような確認は制作前に行うべきだと思いますが、制作当時はこの回路が等価である事さえ解っていなかったと思います。

歪を比較してみました
 左は1kHzのFFT解析の比較です。(赤:フローティング 青:OPT利用(キャパシタ無し) 緑:キャパシタ有り)
 フローティング電源方式(赤)とOPTによる電源分離方式(青)を比較すると二次歪に10dB以上の差が有ります。私は当初、これはOPTの一次側の直流抵抗の影響によりプレート出力側とカソード出力側のスクリーングリッド電圧に差があるせいだとばかり思っていたのですが、実はカソード側に入れたプレート電流検出抵抗(5.6Ω)の影響だという事に気付きました。考えてみればカソード出力側はOPTのインピーダンスが加わるので5.6Ωは大した問題では有りませんが、カソード接地側は影響度が大きくなります。

接地側もキャパシタで結合
 そこで接地されているプレートとカソードも同様にキャパシタ(C3:270u)で結合したのが左図(クリックで拡大)で、そのFFT解析(1kHz)が上の緑線です。二次歪が大きく改善されフローティング電源方式並になりました。
 尚、270u(C1・C3)は450Vの270uを安価で纏め買いしたのが、手元にあったので使用しただけです。もう少し大きいほうが良いのかも知れません。
 10kHzはどちらも高域補正(C4)が必要です。二次歪が最小になるように値を決めると、何故かフローティング電源方式の方が大きな値(3pF)となりましたが、実際の値は実機でやってみないと解りません。
 結論はフローティング電源方式と変わらない性能が出そうです。そうなるとDEPP用のトランスが使用できるし電源も倍圧整流で嵩上げ電源が作れるし、メリットは大きい気がします。

10.SEPPと超三Ver.3

 私は最初に作ったのが超三差動PPで参考にした回路が超三Ver.1だったので、制作したCSPPアンプは全て超三Ver.1ですが、 元々、並列給電方式SEPPは上條さんの 超3極管接続Ver.3 EL86 SEPP ステレオパワーアンプを6BM8で置換できないかと考えていました。色々思案はしてみたもののH-K間電圧の関係で置換は無理だし、当時は超三Ver.3もよく理解できていませんでした。
 最近少しは理解力が上がったのか、並列給電型SEPPでも超三Ver.3が可能な事が解り、超三Ver.3の並列と直列をシミュレーションで比較してみました。
 6BM8を超三Ver.3で使うにはH-K間電圧の問題があるし、現在の販売価格からするとコストパフォーマンスが悪い気がするので6CW5と帰還管はその特性がそのまま繁栄されるので6FQ7にしてみました。  どちらも初段はバイポーラTr+J-FETによるソースフォロア入力ですが、並列型はP-G帰還で直列型はブートストラップです。
 並列型はP-G帰還とブートストラップの変更は簡単に出来るのでどちらも確認してみましたが、シミュレーション結果からいうとP-G帰還の方が低歪です。また並列型ではゲインがもう少し欲しいと思ったので超三によるNF量を少し減らしてみました。

直列型SEPP+超三Ver.3(クリックで拡大)
 上條さんの 超3極管接続Ver.3 EL86 SEPP ステレオパワーアンプです。
シミュレーションでの特性
利得:8.22倍(超三接続無し:約500倍 超三接続によるNF量:35.7dB)
D.F:8.44
歪率:0.13% (1k, 1W)

並列型+超三Ver.3(クリックで拡大)
 並列給電方式のSEPPに超三Ver.3をアレンジしてみました。

シミュレーションでの特性
利得:10.96倍(超三接続無し:約67倍 超三接続によるNF量:17.6dB)
D.F:8.83
歪率:0.05% (1k, 1W)

1kHz, 1WのFFT解析(クリックで拡大)
 赤:直列型 青:並列型
 超三Ver.3はVer.1と異なり、帰還管が初段の差動回路の外にあるので帰還管の2次歪が強調されたような特性です。

10kHz, 1WのFFT解析(クリックで拡大)
 赤:直列型 青:並列型
 並列型も直列型も主な歪成分は2次歪です。初段が差動入力の恩恵かそれともP-G帰還の恩恵か1kHz・10kHzともに並列型の方が歪が小さくなりました。

 超三Ver.3はNF回路を単純に三極管に置換えた形をしているので三極管シングルアンプのテイストを期待出来そうな気がします。(実際は作ってみないと解りません)
 並列型+超三Ver.3は出力段が帰還管より先に立ち上がった場合の対策さえ考えれば魅力的で制作意欲を刺激されます。

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